支えられている私　　　沖井　智子
　「広い何もないはらっぱに一人ポツンと置かれた時、どうやって生きていったら
　　いいかわかるか？」
　「ううん、わかんない」
　「それがわかるようになり、そして出来るようになるのがスカウティングだよ」
　私がガールスカウトに入団した時に、父に言われた言葉です。それ以来、私の頭
の中にはいつも「広い野原、一人、生きる」この三つの言葉があります。もの心が
ついた時には、もう私のまわりはスカウトたちがいつも出入りをしていました。
　私がやっと入団をゆるされたのが小学２年生。上級スカウトになり、リーダーにな
り、トレイナーになり、そのつど先輩スカウトである父に助言してもらってきました。
　トレイナーになる時、こんなことも言われました。
　「何かひとつでいい。これだけは絶対この人に聞けば、たのめば教えてくれる。
　　この人の右に出るものはない！といわれるぐらいの何かをもて」
　私はずーっとこの事は自分のスカウトとしての技術のことであると思っていました。
ところが、そうではなかったのです。たしかに技術をみがくのは大切な事です。でも
入団する時に言われた、一人っきりでどうやって生きていくのか？これが大切だった
のです。
　生れて来る時、死んでゆく時、人の力をかりたとしても、一人でその場面に対処し
ているんです。その時、私がたのみとするものはなんなんだろう。それを知ることが
大切だと教えてくれていたんです。スカウトの創始者であるベーデンパウエル卿は
「人間は明確な信仰心をもつべきである」とおっしゃっています。
　阿弥陀如来の教えに会う事のできた私は、決して一人になる事はないんです。
いつも如来さまがそばにいて下さるのです。周りに支えられて生かされている私なの
です。だからいつも心強く前向きに生きていけるのです。お念仏を喜ぶ同朋がいつも
一緒です。たった一人、広い野原でポツンといる時でも、いつも明るいあたたかい心
でいられる、その心を育ててくれる。これがスカウティングです。これが阿弥陀如来
にささえられた私の生き方なのです。　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　「大乗」平成１２(2000)年9月号　法味随想