女性布教使研修会に参加して　　　沖井智子

　「スポンジになったみたいだ」
研修会に参加中、私は自分自身をそう感じていました。耳にする事、眼にする事、
すべてが新鮮で「ワァーすごい、へェーそうなんだ、アァーそうだったんだ
」と私の頭の中、身体の中にスィースィーと心地良くはいっていくのです。
「布教使になろう」と思い始めたのは、教師資格をいただき、本格的に法務を
手伝いはじめ、２・３年たった頃だったと思います。法事の席でご法話をさせて
いただくのですが、自分の思っている事がご門徒の方々に伝わっていないなあと
思いはじめたのです。

「どうしたら、喜びを伝えられるのだろう」という問いに、父は一言こういいま
した。
「布教の勉強をしてみたらどうだ」
「女性の感性で伝えられる事も多いのではないのかな」というアドバイスでした。
伝道院で勉強をするのが良いだろうと思ったのですが、ちょうどその頃、私は
子育ての真最中、とてもとても百日も家をあける事もできません。それで、まず
は父からポイントを教えてもらったり、手法を教えてもらったり・・・・。
でもその時はこう思っていたのです。
「長男が大学に入学する年に私も伝道院に！」
ところが、いよいよその年令が近くなってよく調べてみると年齢制限があったの
です、４５才。

「ん！入学を待っていたら４５才を過ぎてしまう」
そこで、布教使補の手続きをとり研修を受けさせていただいたのです。そのとき
から女性布教使研修会のご案内をいただくようになり、出席したいと思い、やっ
と３回目にして実現できたのです。ですから期待も大きく胸をふくらませて、と
いう感じでの出席でした。
　布教使補研修に参加して、自分の未熟さを思い知らされ、やっとスタートライ
ンに立った私である事を自覚しました。布教の難しさ、布教の大切さ、布教使の
担う大きな責任。とても大変なスタートラインに立ってしまったのではないか、
私のような未熟なものが「布教使です」と言って良いのだろうか？いろいろな思
いに、ちょっと落込みがちな私でした。こんな時、女性布教使研修に参加をし、
たくさんのお話しや諸先輩の歩みを聞かせていただき、私の心は少し落ち着きま
した。諸先輩がいらっしゃる、そしてこれだけ仲間がいる。そして思い出したの
です「女性の感性でできる話しを」と言っていた父の言葉を。
　女性、女性と言うと、つい差別のことを思ってしまいがちなのですが、差別と
区別があると思うのです。女性の感性、男性の感性、その違いがあって、世の中
面白いのでしょう。それをお互いに認め合ってこその社会だと思っているのです。
とすれば、私のできる事はと模索してみると、ありましたありました、私の大好
きな仏教讃歌を通して、皆さんにお伝えするのです。私の少ない経験の中で、私
がいただいているお法とひびきあう讃歌が、たくさんたくさんあるのです（もち
ろん仏教讃歌がお法を柱にしているのですが）

　何かやっと、私のラインが見えてきたような気がしました。スタートラインに
立ったといっても、そのラインもはっきり見えていない私でした。そのラインが
はっきり見えたのが、この女性布教使研修会でした。ですから研修会の間中、な
にかウキウキと楽しく心地良くすごす事ができたようです。
スタートラインが見えた今、私の大きな大きな夢がひとつふくらみました。それ
は、声楽を勉強した姉と二人三脚で「仏教讃歌と法話のつどい」というようなス
タイルで、いろんな所をまわってみたいのです。老人ホームでも、保育園でも病
院でも、それを聞いてくださった方々が、生きている事が楽しい、と言っていた
だけるような、そんな「つどい」をして歩けたらなあ！と思っているのです。
これは実現はむずかしいかもしれません。でもいつかは・・・・と思うのです。
　しかし、それにつけてもまだまだ未熟な私です。スポンジのようにスーッと何
でも吸収するかもしれません。でも、スポンジは乾いてしまうのもはやいのです。
吸収しきれなくなって、こぼれてしまう事も多いのです。今の私は、このスポン
ジの受け皿をしっかりとつくりあげていく時期だろうと思っているのです。
　布教使に任用いただいて、まだ一年ちょっと。これから先、大きな喜びにも会
うでしょう。大きな壁にもぶちあたるでしょう。でも、私は一人ではないんだ、
如来さまが一緒、親鸞様が一緒、そして共に歩む朋が一緒、そう思うときっとウ
キウキと歩む事ができるでしょう。その喜びを一人でも多くの人にお伝えしてい
けたらと思っています。仏教讃歌のメロディーにのせて！。

『伝道』57号　2002.3.1