「わわん　わんわん」　　　

愛犬「ちょこ」の吠える声で目が覚め、時計を見ると朝の4時。いったい
何に吠えているのかと、「ちょこ」の見ているほうを覗いてみました。
そこには、隣の家の屋根の上にとまりキョロキョロとあたりを見回す
真っ黒なからすの姿がありました。
　「ちょこ、ちょこ！そんなに吠えなくてもいいじゃない。別に何も
悪いことしてないんだしさ、もっとゆっくり寝ていようよ」
そう言いながら頭を撫でてみたのですが、ちょこはまだ窓からはなれません。
ゆっくり寝たい私にとっては、ちょことカラスの行動は迷惑千万なのです。
やっと窓から離れたのは、そのカラスがどこかへ飛んでいってからの事でした。
　なぜちょこは一生懸命吠えたのかしら？私も思いをめぐらせて見ました。
ちょこは犬。空を飛ぶことはできません。朝早く空をゆうゆうと飛び、となり
の家の屋根にとまり、ちょこが自分の縄張りと思っているあたりを我が物の
ように見回しているカラスに腹が立ったのでしょうか？それとも空を飛んで
みたくてカラスに呼びかけていたのでしょうか？
そこまで考えて私は
「あれれっ！？まてよ。こんな風に思うのは、なんか変だぞ？」と思ったのです。
だって、ちょこもカラスもこの私も、皆同じ『いのち』を今生きているんです。
なのに私が思いをめぐらせていることは、この世界は私が中心にいると決めて
考えています。でも、本当は違うんですよね。私達は決して一人で生きている
のではなく、皆かかわりあって生きているのです。なのに私はいつも自分ひとり
で生きてるように考えてしまっていると感じたのです。きゅうにはずかしくなり
ました。
  今、皆が如来様に願われた同じ『いのち』を育んでいるのです。お互いの立場
に立って、やさしい気持ちで接していくことが、如来様の願いに答えることに
なるのかなあと思った出来事でした。

仏教こども新聞　2005.06   沖井智子