「金魚とすいれん」
　
　家の前に、すいれん鉢が二つあります。
以前は、玄関の脇に池があり、そこに「すいれん」が咲き、
「金魚」が泳いでいました。
その金魚は、お祭りで買った金魚です。買ったお姉ちゃんは、
もう成人式をむかえました。
いつも池を覗いては、金魚の元気な姿を見て喜んでいました。
だって、ときどき近所の猫さんが、じーーーっと覗いて、金魚
さんたちを狙っているんです。でも、すいれんの葉に守られて
の毎日を無事に過ごしていました。
　その「金魚」と「すいれん」に、一大事件が起こりました。
池の取り壊しです。お姉ちゃんのお母さんとお父さんは、大急ぎ
で「すいれん鉢」を買って来て、「すいれん」と「金魚」を救い
出しました。「すいれん鉢」に移った、金魚さんですがどことな
く不安そうです。鉢の中で動き回ることもなく、隅っこのほうで
じーっとしてるんです。
水温が低いのかなあ？　「ああ！猫さんが怖いのかなあ？」
ともおもって、猫さんの手が届かないようにネットもかけました。
それでも、じーっとしています。
「どうしてかな？」お母さんは不思議でした。
　しばらくして、鉢の中はすいれんの葉でおおわれました。
そしたらどうでしょう！
動かなかった金魚さんたちが、泳ぎ始めたではないですか！
お姉ちゃんも大喜びです。だって、いつも心配して、お腹が痛く
なるくらいだったんですから。
（金魚さんは、そんな事に気がつかないでしょうけどね。）
やっと気がつきました。「すいれん」の葉が、なかったからなんです。
大きな池から小さな鉢に移るのに葉を切ったので、いつも自分たちを
守ってくれている葉がなくなっていたんです。だから、のびのびと
できなかったんです。
金魚さんにとって、すいれんは日陰を作ってくれたり、猫さんから
守ってくれたり。きっと、なにか私たちのわからない言葉でおしゃ
べりもしてるんでしょうね。
　お祭りが縁で、我が家にやってきた金魚さん。すいれんとの出会い
があり、安心してのびのびと泳ぎ回っています。

　おやおや、なにかに似ていませんか？
私たちが、支えあって生きていることや、阿弥陀様に見守もられて
生かしていただいている様子にどことなく。　
金魚も、すいれんも、私たちもみんな同じ大切な「いのち」を一緒に
育んでいるんですね。
毎日を大切に、手をとりあって生かしていただきましょうね。


仏教こども新聞　2007.12   沖井智子