らしくあれ（Ａ）　　
最近、こんな話を耳にしました。
「『らしくあれ』っていわれたんだけど、らしくあれってなんだろうね。」
私は、ちょっと考えてしまいました。
でも、ふっと思い出したのが「阿弥陀経」の中にある、
「池中蓮華大如車輪青色青光黄色黄光赤色赤光白色白光微妙香潔」
という一節です。これは、注釈版聖典によりますと、
「池の中の蓮華は、大きな車輪のごとし、青色には青光、黄色には黄光、赤色
には赤光、白色には白光ありて、微妙香潔なり」と書いてあります。
私は、この一節がとても好きです。
わたしは、小さいころとってもとっても太っていて、既製品の服は身体にあい
ませんでした。いつも、贅沢なようですがサイズをはかって作ってもらってい
ました。つまり小学生だと言うのにいっちょまえにオーダーメイドの服を着て
いたのです。当時、“肥満児”という言葉がはやったのですが、まさにその
“肥満児”だったのです。そうなると、学校での生活はどうであったかという
と、いわゆる“いじめ”にあっていたのです。
　「お前が歩くと、学校がつぶれる。」
　「お前が歩くと、学校中がゆれる。」
　「お前がいると、教室の空気がなくなる。」
いろいろいわれました。そのたびに、私はとっても切なくて、学校がいやにな
ったのです。私は、両親に訴えました。
　「もう学校はいやだ」「みんないじわるだ。」「違う学校に行きたい。」
そんな時、父が話をしてくれた中にこの阿弥陀経の話がありました。
　「お浄土ってしっているか？」
　「知らない」
　「そうだろうなあ。お父ちゃんも行ったことはないけどな、とっても良いと
ころだそうだ。なんともいえない香りがして、すずやかな風が吹いていて、池
の中にはいろんな色の花が咲き乱れている。そして、その花は、青い花は青い
光をはなち、黄色の花は黄色の光を、赤い花は赤い光を、白い花は白い光をは
なっている。そのそれぞれの花の光がまじりあってすばらしい光となってるん
だぞ、だから、お前ももっと自分の光を見つめてみたらどうだ」
　小さい頃の私は、深く考えることもせずに、そんなお浄土なんて私の知った
事ではない、とにかく今、こんないじわるをする人たちからにげたいんだ、と
思うだけで自分を知ろうとはもちろんしませんでした。お父ちゃんのお説教な
んか聞きたくない、と思うだけだったのです。
　今、思いかえしてみると、とても大切のことだったと思えるのです。
　お浄土の池からは、花々がいろんな色を出し、お互いの光を認めあって、お
互いに相手の光をよりいっそう輝かせ自分一色の光よりも数倍の輝きをはなっ
ているのです。その光がまた如来さまの光とあいまって、私たちにふりそそい
で下さっている。こういただくと、だだをこねていた私がとってもはずかしく
なります。今池の中を私たちのいる此岸ととらえた時、私たちをその一つ一つ
の花にたとえたとしたら・・・・・。
私たちは、相手を本当に認めているだろうか？相手の個性を尊重しているだろ
うか？と思うのです。
　私が、この阿弥陀経の一節からお聞かせいただく事は、「自分をしっかり見
つめてくださいね。そして相手をしっかり認めてくださいね。お互いに生かさ
れているいのちを大切に、誠実に手をとりあって一生懸命生きましょう」とい
う事なのです。
　そんな事から考えてくると、最初に耳にした『〜らしくあれ』という事は、
私はまず自分を知る事、そして相手を認める事だと思うのです。
　日常生活の中で、ついつい私たちはいつも自分が正しい、相手がまちがって
いると考え相手をつぶすことしか考えていないような気がするのは私だけでし
ょうか？いろんな考え方があり、いろんな生き方をなさっている。だから、楽
しい人生を送る事ができる、また反面、多くのぐちも出てくるのでしょう。
　そんな私たちに変わる事無く如来さまの光が届いているのです。みな同じく
いただいている『いのち』なのです。私らしく一生懸命み光の中で日々をおく
らせていただこうと思います。
　ありがとうございました。

ラジオ放送「みほとけとともに―西本願寺の時間―」2003.2.6　放送