「お寺の中のスカウティング」　　　　　沖井智子

　＜スカウト活動って？ガールスカウトって？＞
　ボーイスカウトはご存知でもガールスカウトをご存知の方は少ないのでは
ないでしょうか？
　ガールスカウト活動の発祥は、ボーイスカウト活動のなかにあります。
スカウト活動は、イギリスで始まった活動でベーデン・パウエル卿が、最初
は男の子たちのために作られました。つまり、将来を担う子供たちを育てる
ためのものです。
　その活動の中で、女の子が一緒に活動しているのをご覧になったＢ−Ｐ卿
が「男の子と一緒ではいけない。男の子には男の子の、女の子には女の子の
活動があるはず・・・。」というところから、妹のアグネスさんに力を貸し
てもらい、女の子のスカウト活動をつくっていったのです。その後結婚をさ
れ、奥様がしっかりとガールスカウト活動を深め広めていかれたのです。

　＜ガールスカウトの目的とは＞
　では、そのガールスカウト運動の目的はなんでしょう。
「理念」には
　『少女たちが精神的道徳的価値を学び、すすんで奉仕し、責任ある世界市
　民として人類の平和と幸福に尽くすことのできる人に育つよう自ら学ぶ楽
　しい機会を与えること』　　　　　　　
とあります。　その目的の中で、どんな少女に育ってほしいのかを明確に表明
したものが、「使命声明」としてあらわされています。それが、次の文です。
　『少女と若い女性が、自分自身と他の人々の幸福と平和のために、責任ある
　　市民として、自ら考え、行動できる人となれるようにする。』
そして、その実践のための指針として「やくそく」と「おきて」があります。
「やくそく」には、
　『私は、　神（仏）に対するつとめを行い　　地域と国と世界への責任を
　果たし、人に役立つことを心がけ　ガールスカウトのおきてを守ります。』
とあります。私たち本派スカウトは「仏」としてやくそくをしています。

　＜スカウト活動になぜ仏さまなの?＞
　なぜ、このように「やくそく」のなかに「仏」という言葉が入っているのか
といいますと、創始者であるベーデン・パウエル卿がおっしゃっているのです。
　「人間は、明確な信仰心を持ってこそ、幸福な人生をあゆむことができる。」
　「人を幸せにしてこそ、自分の幸福がある。」と。
　つまり、B―P卿は信仰に基づいた行いをすることを奨励し、
「スカウトは信仰をもたなければいけない」と言い切っています。
そこまで言い切るのはなぜか。　
B-P卿は敬虔なクリスチャンであるという土台があり、
「人間が（私が）、今こうして活動させていただけるのは、周りの支えがある
からであり、『いのち』あるものすべてが私を支え生かしてくださっている。
『神』に感謝することが一番大切である」と教えてくださっています。

　＜本願寺派スカウト＞
　この思いは、私たち真宗門徒にとっても同じことです。『神』を『阿弥陀
さま』に置き換えるだけです。「願われて生きている私たちである。今を一
生懸命精いっぱい生かしていただく。願われたすべての「いのち」を尊重し
あって生きてゆくことが大切である。」ですから、私たち本願寺派スカウト
は、思いが同じであるからこそ、寺の活動の中にスカウトを取り入れ、
「阿弥陀さまの願い」「親鸞さまの願い」を通して「いのち」の尊さを伝え、
「おかげさま」の人生を歩める子供を育てたいと思っているのです。
その手段としてスカウトの技術もありますし、スカウト自身による宗教儀礼
（スカウツオウン）もあるのです。
スカウト活動の中に差別はありません。スカウト活動が始まったときから、
差別ではなく、女性、男性の役割をしっかりと見極め、その特性を生かした
活動をしています。
「お互い様、おかげさま」です。障害者の活動もそうです。スカウトでは、
はやくから差別なく活動を展開しています。同じように受け入れていく方法
をみんなで論じていきます。お互いに個性としてとらえ、持っている能力を
発揮してみんなで一つのものを作り上げていくのです。

　＜若い力をいかすために＞
　今、私たち本願寺派のガールスカウトでは、ヤングリーダーの会「沙羅の
会」を立ち上げ、活動をはじめました。全国にはたくさんの本願寺派ガール
スカウトが登録されているのですが、なかなか顔を合わせる機会がありませ
ん。このすばらしい活動を若い人たちにも、また多くの宗門内の方々にも知
ってもらい、つながりをもっともっと深めて行きたいと思ったからです。
せっかく阿弥陀様のもとに集った若い力を、活かしていきたいと思っていま
す。スカウト活動は、決して野外にだけ、目を向けているわけではないので
す。活動の中から感じ取ったすべてのことを、普段の生活の中にどう活用し
ていくかが、大切なんです。

　＜私たちの望み＞
　ただ、残念なことに本願寺派のなかにあって、スカウト活動が異質なもの
と捉えられているように思えるのです。
　スカウト活動は、「一度誓いをたてたならば死して後もスカウトである。」
といわれます。教育規定やシステムをみると、そのことがよくわかります。
卒業ということはありませんし、周りの方々の特技を活かしどんどん協力を
依頼していきます。リーダーだけが抱え込むのではなく、地域に根ざした活
動にしていくのです。
　いま、本願寺が掲げている「キッズサンガ」計画には、最適ではないかと
さえ思います。
昨年の夏、石川県で日本ジャンボリーが行われました。ジャンボリーでは、
かならず「宗教儀礼」があります。一日のプログラムのほぼ半日を費やしま
す。今回、新門様が本派スカウトの総裁としてお出でくださいました。ユニ
フォームを着用なさった新門様を中心に、ジャンボリー総参加者２万人のう
ち、２７００人が本派の宗教儀礼に集まってきました。この力を放って置く
のはもったいないと思っています。
　寺の活動のなかで、どうしても日本連盟の規約等が活動の妨げになること
もあります。ですが、私たち寺にかかわる者の協力体制がしっかりととられ
ていけば、この若い力は後々、宗門の大きな力になってくるのです。そして、
なによりも「いのち」の尊さを大切に、「おかげさま」のこころで人生を歩
む人間が育っていくのです。宗門でも、スカウトでも、それが最大の望みな
のではないでしょうか。
宗門の中には、青少年育成のために「少年連盟」「仏教青年連盟」がありま
す。「仏教婦人会総連盟」「全国仏教壮年会議」も、後押しをしてくださっ
ています。
皆で協力体制をとっていくときではないかと感じています。

（スカウト指導者会副理事長）

宗報・クローズアップ・サンガ　2007.03