人生観
　『お寺は、私の人生観を大きく変えてくださったところなんですよ』お母さまを
亡くされたのがご縁となってご門徒さんになられた、四十代の男性の言葉です。こ
の方はいつも家族ぐるみで、寺のいろんな活動に積極的に協力してくださっています。
　ある時、「いつも、いろいろご協力いただいてありがとうございます。本当にう
れしいです。」とお話をしたとき、前記のような言葉が返ってきたのです。
「えっ！！この方の人生観を変えるなんて、何かそんな大層なことしたかしら？」
とよくよく聞けば・・・。
『私はこれまで、お寺というのは葬式と法事をするところだと思ってました。とこ
ろが、こちらに伺うようになってみると、門徒さんたちとワインの会をしたり、
スカウト活動をしたりと、いろんな活動をなさっているんです。その中でお聞きす
る住職さんのお話が、また心に響くんです。そして仏壮に交ぜていただいた時には、
後片付けから何からすべて男性の手で、それもさまざまな立場にいらっしゃる方々
が、率先して茶碗を洗ったり机をかたづけたりされる。そんなみなさんの姿から、
人は皆平等に生きていることを教えていただいたんです。宗教は今生きている私た
ちにこそ必要なんだということが、よくわかりました。生かされている私だったん
ですよね。そう気づかされると人生観もかわり、家族にもやさしくなれたんですよ』
とのこと。
　私は心から踊り上がらんばかりでした。私たちの皆の心をあわせた活動が、また
一人、お念仏の仲間が増えたのです。心から「生かされている私」を喜んで下さる
仲間が。「やった！うれしい！お寺冥利に尽きるね」と、つくづく思いました。
　言葉だけではなく、少しづつでも行動で、後ろ姿で示していくことの大切さを教
えられた出来事でした。「お寺冥利につきる」喜び。私にとってそれは、たった一
人でもいい「お念仏に出会えてうれしい」という声が聞こえたときなんです。
　　　沖井　智子　本願寺新報　2001/7/20　共生共感共歩