共にあゆむ　　●VOL.57
　　　女性にやさしい社会とするために

「男女共同参画」という言葉が、世の中に広がり始めて、ずいぶん時間がたち
ました。最近では、この言葉をご存知の方も増えました。もともとこの「男女
共同参画」という言葉は、「性差で差別されることなく、男女共にあらゆるこ
とに参画の機会が保障されること」を言っていると私は捉えているのですが、
ちょっと違ってとらえている方もおられると思うのです。
　男性の中には、女性に対して「共同参画なんだから、同じように仕事をしろ！」
とおっしゃる方もいらっしゃいます。でも、それは違うのです。「共にはたらく」
「共にくらす」とは、それぞれを認め合って、男性だからとか、女性だからと
いうのではなく、その人の個性を尊重して事を進めていくことなのです。
　今まで、いや今でも男性中心の社会の中で、女性には男性ほどには学びの場
や、社会参加の機会が保障されていない現実があります。
　たとえば私が、お寺の坊守として門徒さんの悩みに添えるように知識を深め
たい、また、話し合い法座の進め方を学びたいなど、自分を磨くための研修会
に参加したい、平和を願う集いに参加したい、差別をなくす運動に取り組みた
いという思いを持ち、行動を起こそうとします。すると、「そんなことより、
坊守はお茶汲みと掃除をわすれるな！」というような言葉でかたづけられてし
まうのです。
　また、そのような声や、意識を乗り越えて、女性が色々な点で研鑽を重ね、
色々な点で発言をしたり、行動したりすると、「女のくせに！」などと、非難
されてしまうこともあります。
　あなたは、女は一歩下がっていればいい、「はい」と言っていればいい、と
思っていませんか？　知らず知らずに、自分で参画の機会からにげていません
か？
　このように、「男女共同参画」という言葉の中には、本当は色々な問題が潜
んでいるのです。だからこそ、私たちが見落としがちなところに、今、きちん
と目を向けていかなくてはならないのではないでしょうか？
　私たちは、性の違いにとらわれることなく「男女共同参画」のために、共に
研鑽し、学び、認め合うことが大切だと思います。それは、男性としてでも女
性としてでもなく、その人そのものの生き方、つまり個性を尊重することにな
るのです。
　なによりも、如来さまから同じ「いのち」と、差別のない「いのち」をと、
願われている私だからこそ、あなただからこそ、できることだと思うのです。
　たまには、ちょっと横から物事を見てみませんか？

副住職　沖井智子

本願寺基幹運動パンフレット    本願寺出版社（2004年4月）