ｿｳﾘﾝﾒｰﾙ　No.17                                    2002.3.12
雪印食品から始まった問題は、羊頭狗肉ということわざをおもいだしました。
ラベルに偽りあり、ですから犯罪には違いないのですけれどなぜかあまり憎め
ないのです。それは、牛肉の産地の違いは、あるいは国産と輸入肉の違いはプ
ロにもわからないほどであったということがわかったからなのです。
　私が肉を買ってくるとたいがい輸入肉「こんな肉を買ってきて！いい肉買っ
てきなさい」とよくいわれました。こんどは「ほら輸入物でも十分だろ」と言
い返すことができます。
　ただちょっとしたちがいをいかにも価値のあるように思い、金額に差をつけ
てしまった私たちのおろかさをつかれてしまったのだと思います。産地のこだ
わりを知っているようにふるまい、高いほうが良いもののようにおもってしま
うわたしたちの物欲を、いいようにあしらわれてしまったようです。
　最近のマスコミでは、「こだわりの・・・」と料理とか、お菓子などいかに
も優れているかのように紹介されていますが、「こだわり」とは広辞苑には
「さしさわる、かかりあう、邪魔をする」とあり、あまりいい表現ではありま
せん。ちょっとしたことにとらわれる　拘泥する　元来いい意味では使っては
いないのです。「鈴木宗男先生がムネオハウス建設にこだわり外務省高官をよ
びつけた。」といったように使うのが本来の用法だと思います。
　こだわることは決して間違いではないと思います。ちょっとした違いを気に
して改良を重ねていったところに進歩があります。今の日本の技術や文化を支
えているのは、そんなこだわりだと思います。でも、工芸品・美術品ならいざ
しらず、日常のものではコストは重要な問題です。こだわりもほどほどにしな
いと同じようなことがまた起こると思います。
　ところで、ラベルを張り替えた人たちはなぜそんなことをしたのでしょう。
会社が利益をあげねば給料が上がらない、それどころかつぶれてしまう。生き
るためにはやむをえないと良心を押しつぶしたのではないでしょうか。それが
いつしか当たり前になってしまう。霞ヶ関もそんな常識ではわからない当たり
前の世界のようですが。でも、私たちもその立場になったらおなじように思う
のではないでしょうか。私たちも同じように弱い人間なのです。
　そんな私たちがともに生きていく世界、それが娑婆（此岸）なのです。お悟
りの浄土（彼岸）とはちがい、悩み苦しみながら生きなければいけない世の中
です。その世界を智恵と慈悲の光で照らし続けてくださっているのが、阿弥陀
如来です。手を合わせ許し許されながら生きていこうではありませんか。