ｿｳﾘﾝﾒｰﾙ　No.46　　　2007.11.13 「ばちあたり」 散歩をしていたら、お寺の隣の家の奥さんが出てきた。 あら和尚さんいいところへ、ちょっと聞いてみたいことがあったの。 お宅は浄土真宗じゃないからしらんじゃろうが、和尚とはいわんのじゃ ばちあたり せっかく丁寧に言ったつもりなのに、じゃあなんていうの わたしは住職じゃ へー、お宅は親子4人でお経を読んでるじゃない、どう区別するの。 　住職に女住職に若住職に娘住職？ 住職はお寺に一人じゃ、あとは僧侶じゃ じゃあ、住職に女僧侶、若僧侶、娘僧侶？ お前さんは理屈っぽいなあ。いつも呼んでるように普通に呼べんのか 坊主 呼び捨てはやめんかい 坊主さん ちがうじゃろ、おぼうさんとよべんのかい おしょうさんと大して違わないじゃない、最初からそう教えてくれればいいじゃないの まあまあ、自分に対する敬語をこのように言いなさいというのは、おこがましいからな でも、うちの子供は学校で先生のこと先生と呼びなさいって習ってきたよ そうじゃな、教師どうしでも先生って呼び合っているくらいじゃから。 　坊主はそこまでずうずうしくないよ、陰でなんていわれているかしっとるからなぁ あら、くそ坊主っていってるのわかってるんだ ところでなにを聞きたいのかな お坊さん話がくどいから忘れるところだったじゃない、これよ、これどうすればいいの なんじゃコップかい コップじゃなくて中身、お仏壇にお供えしてた水なんだけど、流しに捨てようとしたら、 　お母さんが、恐ろしいことが起きるからやめろって言うの、これどうすればいいの 姑さんに怒られたのかい、普段からくそ坊主って言ってるからなあ、その割には物を知らん いいから教えてよ お姑さんは言葉を知らん。恐ろしいことが起きるわけじゃない、罰が当たるというんじゃ なにそれ せっかくお仏壇にお供えして、手を合わせた水じゃ、流しに捨てたらもったいない どこに捨てても捨てることには変わりないじゃない いやいやそれが違う、お前さんのところの植木鉢をみてごらん、からからで枯れそう 　じゃないか、その水を植木にやれば木が息を吹き返す。水が有効に使えるというものじゃ なんだそんなことか、じゃあ撒いとこ、お坊さんまたね なんじゃ、これからがいいとこなのに、続きを教えてやるからなーーー ごみを出しに行ったら隣の嫁さんにばったり会った おお、いいところであった、続きを教えてやろう やだね、つかまっちゃたよ そういやがらんでよい、話が半端だったからな お坊さん手短に頼むよ まあまあ、もったいないという話な、禅宗のお坊さんに教えてもらったのじゃ なんだ受け売りかよ 禅宗ではの、修行道場では自分らで食事も作る、その材料も自分らで托鉢したり、 　畑でつくったりするのじゃ お宅の宗派じゃやらないの そもそも修行がないからのう、１０日間の研修じゃあ　かいわれ大根も作れん １０日間でお坊さんになれるの、お手軽ねー その前に勉強もするし、試験もあるわい、僧侶になってからが大変なのじゃ、 　こうやってわけもわからんものに教えを説かねばならん 教えてもらわなくてもいいよ そうはいかん、本人も分からんところで悩んでいるのじゃ、それを汲み取って 　お話をしてあげるのじゃ いい迷惑よ、小さな親切大きなお世話　って標語あったじゃない あれは標語でない、コマーシャルじゃ わかったから、早く話を片付けようよ　坊さんが野菜を作ってるんでしょ そう、だから、食事の材料は大事にする、野菜の切れ端でも捨てないで料理するのじゃ へー、どんな料理 野菜のくずを丁寧に洗ってな、細かく刻む、豆腐を崩して入れるとなおいいが、 　それを油でいためてから、水を入れて煮込む、調味料で味を調えてくずで 　とろみをつけると、けんちん汁になる ほんとにおいしいの？ 話だけでは味がわからんから作ってみたことがある、うどんをいれてけんちんうどん 　にしてみた、女房殿に食べさせたがおいしいと喜んでいたぞ 奥さんは喜ばせただけじゃない、自分の手間が省けるもん、 　でも旦那がやると後片付けが大変なのよね 私はちゃんと後始末をして元通りにしてるぞ、親に見つかるとうるさいからな それはえらいわね でもな、娘と２人で留守番をしているとき、女房がおとうさんのけんちんうどん 　おいしいから作ってもらったら、といってでかけたのじゃ じゃあほんとうにおいしのかな それがな、そのころにはつくり方も忘れていてな、うろ覚えでつくったので 　ちょっと娘には不評であった やっぱり、奥さんはおいしいって言ってあげただけじゃないの そんなことはない、こういう料理は手間を味わうものじゃ、丁寧に心をこめて作れば 　それなりにできる。愛する妻のためと、文句ばっかり言っておる娘のためでは 　心のこめ方が違う あら、愛してるのねーー まあな、心をこめて作ることが大事なのじゃよ、レトルトのカレーを温めて 　できたよーといっているようじゃあいかん、心がこもっておらん、 　あれは非常用じゃ。とにかく、ものを大切にしないと、もったいない罰が当たる 　とよく怒られたのじゃ 罰が当たるって何なの？ 悪いことをしてるのを仏様が見ていて２度とやらないように懲らしめることじゃよ、 　お前のところの子供が公園のシーソーにへんなのり方をして遊んでいて落っこちて 　下敷きになって泣いていたろう、ああいうのを罰が当たったというのじゃ、 　２度とシーソーにへんな乗り方をしなくなったろう 市役所が来てシーソーをもってっちゃたからね、乗れないさ そうやってすぐ道具や他人のせいにして、自分が悪いと反省させなくっちゃ、 　子供はよくならんよ 子供の間じゃあ、おっこったのはたたりじゃーて騒いでたけどね 今は何でもたたりになってしまうな、テレビや映画の影響かな、 　たたりはいつまでも悪いことが続いてしまうようなイメージで、 　お払いをしてもらわなくっちゃと、やってもらえますって電話が来るが、 　来た人はいないな ご利益なさそうな坊さんだものね そうじゃなくって、浄土真宗はお払いをしないの。しないって言うとこないから、 　来てからお勤めをしてお払いなんか要らないんだよって、 　お話をしてあげようとまっているんだけど お話くどそうだもんね そうじゃないよ、取り付いてるというのは自分がそう思ってるだけなの、 　自分がちゃんとしてれば大丈夫、エイリアンとかリングとか、変な映画を見てるから へんな映画知ってるじゃない、ちゃんと見てるんだ 見てません、エイリアンをテレビでやったときは途中で寝ました おっかなくなったんでしょ それもあるけどな、夢に出てくるとかなわんから やっぱり まあ、とにかく、自分が悪かったのじゃないかと反省すること、 　それが罰当たりの意味じゃ、子供たちに教えておかんと、たたりじゃーになってしまうぞ そうだね、反省は大事だものね、・・・あっ、焦げ臭い、鍋かけっぱなしだった、 　坊さんの暇つぶしに付き合っていたから、罰が当たったんだ それはちがうぞ、坊さんのありがたい話で罰が当たるものか、 　お坊さんのありがたい話を馬鹿にして聞いていたから罰が当たったんじゃ