ｿｳﾘﾝﾒｰﾙ　No.52　　　2008.2.12

「戒律」

お坊さん　赤福また売り出したよね。京都に行ったとき買ってきてよ。

相変わらず食い意地が張っているなぁ。残念ながらまだ伊勢だけでしか
売らないようじゃよ。

なんだそうなの、つまんないわねぇ。

冷凍しないから、つくるのは大変なんじゃないのかな。

冷凍だって味変わらなかったじゃないの、冷凍ですって売ってくれればいいのに。

そうじゃな、冷凍のまま売ってくれれば、お土産に持って帰るのに、
悪くなるんじゃないかと心配しないでいいからな。

作り立てですなんて、嘘をつかなきゃよかったのに、
だれもお腹をこわした訳じゃないのにね。

嘘をつくというのは本当に怖いことなんじゃな。信用がなくなってしまうからな。

お坊さんは嘘はつかないの。

嘘も方便というからな、つかないわけじゃあない。

戒律にあるんじゃないの。うちのお寺さんは言っていたよ。
五戒のひとつ、嘘はついてはいかんって。

うちの宗派、浄土真宗は戒律はないのじゃ。

なんだ都合がいいのね。嘘つき放題じゃないの。

実はな、戒と律は違うのじゃ。戒はいうならば個人の努力目標。
律は団体生活を過ごすための決まり、守らないと罰が与えられる。
学校の決まりで、「給食は残さず食べましょう」というのが戒で、
「廊下は走ってはいけません」というのが律じゃな。
給食を残してもがんばろうねといわれるだけで怒られないが、
廊下を走ったら怒られて立たされたろう。このように違うのじゃな。

なるほど、まずい給食残しても立たされはしなかったよね。
へー、戒は守らなくってもいいの。

そこが難しいのじゃな、お前さんだったら戒はあったほうがいいと思うよ。

お坊さんには戒はないんでしょう、何で私には要るのよ。

たとえば、お前さんが間食をしないと決めたとする、
そこに美味しいケーキを貰った、どうするね。

そりゃ、間食をやめるのはちょっとお休みにして、美味しくいただくわよ。

お前さんは決まったことを守らないことに悔いはないかね。

そんなことにくよくよしてたら生きていけないわよ。
また明日からやればいいのよ。

ところがな、私みたいにまじめなものはな、
決まりを破ったことが負担でたまらんのじゃ。

どこがまじめなのよ、いつもむしゃむしゃ饅頭を食べているじゃないの。

間食をしないという決心をしてないもの、いつでも食べるわい。

人のお腹を見てはダイエットしてるかいっていつも言っておいて、
自分はしないの。

だから、まじめな人には「決まり」は心の負担なの。
決まりを守らなくてはというのが重くのしかかり、
破ったときには自分の愚かさに泣きたくなるのじゃ。

うん、そんな人いたよね。お坊さんがそうとは思えないけど。

戒を破っても平気な人には努力目標として戒があったほうがいいし、
戒が負担になる人には、戒がないほうがいいのじゃな。

お釈迦さまは戒律を守りなさいって教えたんでしょ。

そうじゃ、でも戒が負担になる人のために阿弥陀さまがいらっしゃると
教えてくださったよ、戒を守れなくてもいいよと。

ふーん、だから浄土真宗は戒律がないって言うのね。

そうじゃ、ありがたい仏さまじゃろう。

お坊さんはありがたくないけどね。