ｿｳﾘﾝﾒｰﾙ　No.57
「いただきます」

お坊さん元気？ちょっとくたびれてるようね
秋眠宵を覚えずといってな。秋は眠くなるのじゃ。
うそばっかり、そんなことわざないわよ。
ばれたか、お盆お彼岸の疲れがたまったと見える、寝てしまったよ。
ところでこんどはなんじゃ、何でもいうて見なさい。
こどもがね、食べるとき「いただきます」言わなくなったのよ。学校じゃあだれもいわないんだって。
意味ないじゃんだってさ。言われてみるとなんでかな？とおもってね。
生意気盛りじゃからな、何でも理屈をつけたがる。で、お前さんも訳もわからないといったとこか。
いまさらどうしてって聞けないじゃない。お坊さんだったら何か理屈をこねるだろうと思ってさ。
嘘ごまかしは言わんよ、多少のこじつけはあるかもしれんがな。
で、どんなこじつけなの。
仏教の戒律から話さねばな。いろいろ戒律もあるが、殺生戒というものがある。
簡単に言えば「殺すな」ということじゃ。
えらい簡単だね。
だから難しい、「あらゆるものの命を奪うな」ということじゃ。すると、なにを食べれば命を奪わないですむかわかるかな。
えーーー、人を殺すなということじゃないの、わたし何も殺してないよ。
ハエは叩いたけど、逃げられたし。
牛肉を食べなかったかな、肉を食べるということは、だれかが牛を殺して肉にしてくれたということ
で、お前さんが肉を食べなかったら、牛は殺されないですんだということじゃ。
牛は久しく食べてないねえ、豚か鳥しかお目にかからないよ。
その豚や鳥を殺してるということじゃよ。
わかったわよ、動物の肉を食べなきゃいいのね。魚はいいの？
いいや、魚にも命がある、ただ目の前に生きている姿を見ないからあまりむごさを感じないだけで、
おんなしじゃ。
じゃあ、野菜ならいいわけね。
さてそこじゃが、植物にも命はある。本来の命を全うしないで途中で根こそぎ引っこ抜かれたりして
いいものだろうか。
じゃあなにを食べればいいのよ。
命を奪わないで食べられるものを探してみようか。牛やヤギの乳は殺さないでいいな。
鶏の卵も最近のゲージで生ませているものは受精していないから命を奪ったことにはならんようじゃな。
そうするとバターやチーズもいいということか。いくらやたらこもいいの？
魚の卵は、魚を捕まえて腹を割いて取り出すから、魚の命を奪うことに変わりはないな。
うーん、いくら好きなんだけどな。あつあつごはんにのっけてさ。
そうそう、そのごはんじゃ。米や麦などの実はその植物の命が全うしたときの恵みじゃから、
いただいても問題はなかろう。
うどんやそばもいいわけね、実だったらいいの、じゃあ枝豆やピーナッツもいいのね。
ビールがほしいとこね。
酒のつまみばっかりじゃのう。ほかにもあるぞ、トマトやきゅうりもそうじゃな。
穀物や枝になるものはな。植物の命を奪うものではないからな。
果物もいいわけか、リンゴや柿もぼちぼちでてきたよね。
そろそろいも煮の季節だよね。いもはどうなの？
いもなどは、植物が栄養を蓄えて出来たもので、また植えれば命が育つ、いただいてもよかろう。
でもちょっと、青物がほしいわね、ねぎとか春菊とかさ。
にらなどは切っても切っても伸びてくるからいいだろうが、根こそぎ抜いてしまうのは、
問題があるかな。生えているところから少し分けていただくならいいだろうけどな。
じゃあ、大根やにんじんはだめなの？
そういうことになろうかな。精進料理には欠かせないものだけどな。
えーーー、お坊さんも殺生をしてるってこと。
殺生にはいろんな解釈があり、動物性のものはだめだとか、坊さんのために殺した肉でなければ
いいとか、必ずしもこの通りではないがな。とにかく、わたしたちは多くの命を奪っている、だから
手を合わせて「いただきます」なのじゃ。
「命をいただいてわたしは生かさしていただきます、いただいた命を無駄にしません。」
と目の前に提供された命に感謝をすることが大事じゃな。
わかったわ、子供に教えてやるわ。
でも、命を無駄にしないってことは、残さないって事で、痩せないってことね。
そりゃ、いっぱい買ってくるなってことじゃ。