ｿｳﾘﾝﾒｰﾙ　No.59
「猫のお参り」

お坊さん、お参りしてくれない。

お前さんのお寺は違うじゃろう、そっちに頼みなよ。

私じゃないの、友達なんだけど。お寺は知らないからどこでもいいからってさ。

なんじゃいい加減なやつじゃな、まさかお葬式じゃあなかろうな。

お葬式は終わったんだって。

それじゃあお葬式をしてもらったお寺に頼めばいいじゃないか。

ペット霊園で火葬をしてもらっただけなんだって。

なんじゃ、人間じゃあないのか。

いわなかったっけ、猫よ。今日四十九日なんでお参りしてほしいんだってさ。

まあいいよ、つれてきなさい。

はい、こちらの２人です、よろしく。私も参列するわよ。

じゃあ本堂でお勤めするからな。
お花もお供え物も、ほうお骨も写真も持ってきてるのか。

ちゃんと成仏するようにありがたいやつを頼んだわよ。

猫が成仏するかよ。
大体猫にお経を聞かせるんだったら、猫語の通訳を連れて来い。

相変わらず屁理屈を！じゃあお参りって何するの。

お前さんたちに、ありがたい教えを説いてやるのじゃな。

散々お説教聴かされてるわよ。

いやいや猫が成仏するといってるようではまだまだ。
迷っているのは人間で、猫は迷わん、ちゃんとえさの時間になれば足元に帰ってくるわい。

それが帰ってこなかったので探しにいったら車にはねられてたのよ。

それは気の毒だったなぁ。
でもな、そのおかげでこうやって仏さまの教えに遇うことができたのじゃ。
猫が自らを犠牲にして、お前さんたちにいのちの大切さを教えてくれたのじゃ。

ほんとうにそうね、大丈夫だって思っていても、みんないつかは死んでしまうのね。

だからお前さんたちには、菩薩さまがこの猫に姿を変えて
いのちの尊さを教えてくださったのじゃよ。猫がかわいそうじゃあない、
気付かさせてくださってありがとうなのじゃ。

じゃあ、この猫は仏さまのお使いだったというわけ？

そうじゃ、よく気がついたな。
お前さんの周りにいるものはみな、お前を救おうと働いてくださっている仏さまじゃよ。

何だかありがたくなってくるわね。

そうじゃろう、お前さんはお姑さんの悪口をいつもいっているが、仏さまかも知れんぞ。

お坊さんだって、いつも猫を追っかけてるじゃない。仏さまのお使いかもよ。

なんの、うちのかわいい金魚を狙ってるにっくき野良猫じゃわい。

そうね、近所のごみをあさって散らかして困るのよ。

それよりお前さんの目の前にいるものがありがたく思えないかね。

お坊さんのこと？神さまだって貧乏神がいるように、仏さんだっていろいろあるって事ね。