ｿｳﾘﾝﾒｰﾙ　No.60
「床座施」

連休の最終日、東京から新幹線の自由席に乗った。かなり混んでいたが何とか座れた。
上野から隣にどっかと座った女性がいた。ふと見ると

なんじゃ、隣の嫁さんじゃないか。奇遇じゃのう。
えっ、隣の・・・・最悪！どっか席あいてないかしら。
立っている人もいるからもう空いている席は無いじゃろう。よくよく縁があるのじゃのう、買い物帰りか、一緒に帰ろうか。
単身赴任のだんなの様子を見に来ただけなのに、よくよくついていない休みだわ。
おやおや、あそこに子どもをおんぶしたお母さんが立っているぞ、お前さん席を譲ってやりなさい。
なんで、やっと座ったんだよ。こんな席でも立ってるよりまし、何で私の席を譲んなきゃならないのよ。
お前さんの席じゃないだろ、みんな同じ切符を持って乗ってきたんじゃ。おんぶで立っているのはつらいじゃろう。
そんなに座りたかったら、次の電車にするか、東京駅まで行って並べばいいのよ。
いやいや、早く帰りたいのは皆同じ、ちょっと譲ってあげればあの人はとても喜んでくれるよ。
私はとってもつらいわよ。そう思っているのなら、お坊さんが譲ってあげればいいのよ。
それではお前さんのためにならん、これは修行じゃ、布施の行じゃよ。
いつもいつもへんな理屈をいってるんだから、いったい何の修行よ。
座っている席は、自分のものだという、とらわれから離れることができるぞ。欲を捨てる修行じゃな。おまけに、困っている人を助けることもできる。お金もかからず修行ができダイエットにもなる、こんなにいいことはなかろう。
私はとらわれたままでいい、修行はまたの日でいい。
ほれ、あのお母さん子どもがぐずり始めて困っているぞ、はやくいったいった。
ほんとにひどい坊主なんだから。・・・・・

ほら、呼んできたわよ、お坊さんも立った立った。
わしは修行せんでもいいぞ。
私ばっかり立ったんじゃぁ面白くないから、あっちの人もよんで来てあげたわよ。こうなったら道ずれよ。
しかたないのう、旅は道ずれか。・・・・では、デッキでお前さん相手にお説教でもするか、何の話がいい？
ゲッ