お念仏がでる時              (智）No.103 2000/07/20

＜＜御仏をよぶわが声は　御仏のわれをよびます　御声なりけり＞＞甲斐和里子

▼「阿弥陀様の前で、良く聞いてみろ。けんかするのが良い事なのか、悪い事
なのか！」「いいって言うまでちやんとすわって、なまんだぶってお参りして
ろ。
　小さい頃、私が阿弥陀様の前で手をあわすのは、父からこう言われた時と何
かお願い事をする時だけだったような気がします。
　そんな私が、父の臨終の枕元にかけつける時に車の運転をしながら、病院の
廊下を走りながら思わず口から出ていたのはお念仏でした。あのお念仏はなん
だったんだろう？考え始めたのは、布教使になるための勉強をはじめた時でし
た。
　僧侶になりたての頃、父におこられイヤイヤしていたお念仏は本当のお念仏
ではなかったなあと考えていた私だったのですが、それが大きなまちがいなん
だなあと気づかせていただいたのです。
　はっとそれに気づかせていただいたのも、やっぱりお念仏している最中でし
た。胸が熱くなりました。「ああ、そうだった、いたらない私を教えて下さっ
ていたんだ、姉妹げんかの反省をする時のお念仏も、お願い事をする時のお念
仏も父のもとにいく時に出たお念仏も、すぺてが、「いつも一緒にいるぞ強く
生きろよ。」と呼ぴかけて下さっている如来様のお声だったのです。
　姉妹げんかの時はあやまる勇気を、お頼い事の時は煩悩をたちきる勇気を、
枕元にいく時は父の臨終にたちあう勇気を、「いつも一緒だよ、安心していい
んだよ」と呼びかけて与えて下さっているお念仏だったんです。そう気がつい
た時、私ば胸が熱くなったのです。
　私の口からでるお念仏は阿弥陀様が私に呼びかけて下さっているからなので
す。
一緒にいて下さっているからに他ならないのです。ありがたい事です。