蕗の薹の天ぷら              (玲) No. 94 1997/03/06

＜＜念仏を喜ぶ家は　春の風　常にそよぐ　心地こそすれ＞＞大野正雄

▼会津にきて初めて蕗の薹の天ぷらを食べました。福山では薹の立った花を摘
み味噌汁に浮かべるだけでした。ほろ苦くて、薫り高く、とてもおいしかった
のです。ところが、昨年暮に村にお参りにうかがったところ、珍しいだろうか
らと、蕗の薹の天ぷらをだしてくださったのです。喜んでいただきましたが、
いつものおいしさがありません。聞くと、やはり雪をかぶったものでないと、
あのおいしさはでないのだそうです。
▼今月の法語は、いかにものどかな春の一日を思わせます。しかし、その春の
風の素晴らしさは、蕗の薹のように厳しい冬を経験したものしかわかりません。
▼家族の誰かが大病をする。あるいは、会社が倒産する。その時、互いに助け
合って、いかなければならないのに、悪い方向に考えたり、迷信に迷ったりす
る事がありがちです。その折、正しい宗教の道理を身につけておくことが大切
です。お念仏のみ教えに導かれ、禍を縁として、心の眼をひらきましょう。
▼病気を楽しむことはできることではありません。辛いことは、辛く思い。悲
しい時は、悲しいと思う。その苦痛を縁として、苦悩の有情にかけられている
大悲をあおがせていただきましょう。と大野正雄師は言っておられます。
▼念仏を喜ぶ家を、社会を育てて、厳しい冬を乗り越え、花々がいっせいに咲
きそろう、会津の春を待つことにしましょう。