夜道に手をつないで   (玲) No. 96 1997/09/10

＜＜私の心の　闇を照らす　真実の念仏＞＞島津　恵耀

▼朝ごみの整理をしていて智子が私に声をかけ、返事をしたら「あなたは何で
そんなこわい声を出すの」といわれました。私は心の闇と向き合っていたので
しょう。急には明るさについていけません。
▼心の闇とは何でしょう。誰にもいえない怒り、欲、愚痴、あるいは過去の世
界に返っているのかもしれません。後悔、腹立ち、みな一人のとき自分自身と
対面するのです。そして闇が次第に深くなるとき、その闇の深さに絶望するの
です。
▼私が幼い子供の頃は、田舎には街灯などなくて、夜外に出ると真っ暗でした。
懐中電灯の灯りを頼りに進むと、灯りの外の、闇の深さが一層濃く恐ろしかっ
たものです。でも、父と一緒に歩けばそんな闇も恐くなく、明かりを消して、
次第に目が慣れてくると、星明かりに遠くの山がうかんでき、道が白く延びて
いるのがわかりました。闇はもうこれ以上深くなることなく、次第に浅く明る
くなっていきます。闇の濃淡が昼間と違う世界を見せてくれたものでした。
▼今、本堂で一人正信偈を唱えるとき、阿弥陀様はただ黙って、闇の深みを照
らしていて下さいます。闇の広さを教えて下さいます。決して絶望することな
く、お念仏を灯りとして闇の中を歩いてこいと、ただ一筋の道を指し示して下
さいます。