質問コーナー

以前お受けした質問を掲載いたします。

Q：もうすぐ父の年忌をむかえます。母もすでに亡くなっています。私ども夫婦には子供もなく、親戚とのつながりもだんだん薄くなっていきます。ご法事をお世話になった方や親戚をお呼びして盛大につとめている方も多いのですが、はたしてそんな事が必要なのでしょうか。夫婦だけで小さくやってもよいのでしょうか？

A：『法事』は何のためにするのでしょうか？「先祖供養」と思っている方が多いのではないでしょうか。

「先祖供養」という時の「供養」は仏教本来の意味ではないのです、と聞かせていただいた事を思い出します。この時の「供養」の意味は、先祖の霊を慰め鎮める事によって自分たちの身に降りかかる災いをさけようというのが「先祖供養」という考え方なのだそうです。

仏教でいう「先祖供養」というのは、本当の意味でご先祖をうやまい、尊ぶ仏事なのです。私たち真宗の門徒としてご法事をつとめるという事は「私自身のため」のものです。つまり、ご法事の場に参集した家族、縁者の一人一人が仏法を自分のこととして聞き味わってこそ、意義あるものとなるのです。亡き人をご縁として、その方が生きぬいた後姿を見、足跡をたどり、お浄土に参って仏となられた方が願っている願いを聞かせていただくことが大切だと思います。その願いは如来様と同じ。『必ず浄土に救いとるから、今を大切に、このいのちを見つめ、しっかり生きぬいて』ということだと思います。

こう考えていくと、大きなご法事を営むことが大事な事ではないのですが、亡くなった方をご縁として仏法にあっていただく事もご法事をつとめる上での大切な役割なのではないでしょうか？このご法事のご縁にあって一人でも多くの方が『いのち』の来し方、行く末を見つめ、生かされている私、願われている私のいのちである事の喜びにひたっていただけたらと思います。

 

Q：嫁いだ娘が『私が死んだら、嫁ぎ先のお墓に入るんだね。それはいいんだけれど、私はお父さんやお母さんと一緒のお墓に入りたい』といいます。娘が嫁いだ先は真宗の門徒ではありません。まして姓も違うのに、私どもと一緒の墓に入ることはできるのでしょうか？

A：私にも覚えがあります。私には姉がいるのですが、姉が跡継ぎの予定でしたので、私はよく言ったものです。「先に生まれたのに、どうして最後まで親と一緒にいるの？どうしてお墓まで一緒なの？そんなのずるい」と…。

ですから娘さんのそうおっしゃる気持ちがわかるような気がします。いつまでも親のそばに一緒にいたいんですよね。

さてお墓とは何でしょうか？お墓の下に亡くなった方がいるのでしょうか？そうではありませんよね。お釈迦様がなくなられた後、火葬が行なわれ、その遺骨はお釈迦様のお徳を慕う人々の願いに応じて、八つの地方に分骨されたと伝えられています。また、親鸞聖人ご自身もお墓など建ててほしいとは思っておられなかったようです。ですが、後に残された者は、いっそうお慕いする気持ちが強く、大谷本廟ができていったのです。そこに多くの人々が生前のお徳を偲んでぬかずきました。このようにお墓とはその人を偲ぶ手だてなのです。

ですから、真宗ではお骨を生前の人とまったく同じに笑ったり怒ったりするとは考えてはいないのです。ですが、お骨は言ってみれば生きていた方の身体の一部なので、ついついそのように誤解してしまうのですよね。ですから娘さんの希望とあれば、嫁ぎ先の方とよく話し合って、分骨して納めるというのは何ら問題はないと思います。また、倶会一処＜ともに一処で会う＞という教えをうけ、大谷本廟に納骨させていただくのも良いと思います。

信仰は個人の自由といっても、日本はまだまだ家の宗教です。他宗へ嫁がれているということですので、相手のご家族とよく話し合い、自分の考え方をはっきりと理会していただく事も大切なことだと思います。

 

Q：先日お会いした他宗の方が、文字数が多くすばらしい戒名をいただいたと自慢げに話をしておられました。私たちは、等しく同じいのちとお聞かせいただいているのですが、文字の多少で人間の価値が表現できるのでしょうか？

A：まず、今世の中では、戒名という呼び方と法名という呼び方があります。
戒名とは、仏道修行の規律を守り修行していく事を誓うときにいただくものです。

法名とは、仏法に帰依し、仏法をよりどころとして生きる仏弟子になった者につけられる名前です。本来、仏教徒にとって亡くなってからつける名前でなく、仏教をよりどころとした生活を送るための生き方をあらわす名のりなのです。

阿弥陀如来様のご本願のはたらきによって信心をめぐまれ、念仏生活を送り娑婆の縁がつき、浄土に仏として生まれさせていただくという浄土真宗のみ教えをいただく私たちにとっては、修行も必要なく、死後の旅もありません。ですから、戒名とは言わず法名というのです。

ですが、この名のりとしての本来の意味が失われて、多くの人が死んだときにつける名前と思われるようになってしまいました。そこで、亡くなった方々を慕う思いから少しでもよい名前をつけてあげようとする気持ちが働き、長くて立派な戒名、法名が求められるようになってきたのでしょう。

ですから、この『名のり』であるという本来の意味からすれば、法名に優劣があろうはずがありません。まして、お釈迦様は、人の貴さは、生まれによってではなく、その行いによるものである事を教えています。立派な名前をつけることが亡くなられた方を尊いものにするという考えは、仏様の教えからはずれたものといえるでしょう。

信心ひとつで、みな等しくお浄土に生まれる事ができるとお聞かせいただいている私たちです。社会通念に惑わされる事なく、念仏生活を送らせていただきたいですね。

 

Q：私たち真宗門徒のいただく法名は2文字であらわされるとお聞きしています。私たちはそれで納得しているのですが、私の父は「文字数が多くなくては」といってゆずりません。なかなかわかってもらえないのですが、どうしたらよいでしょう。

A：私たち真宗門徒、僧侶ともに法名は漢字2文字ときめられており、その上に必ず『釈』の字がつきます。これはお釈迦様の弟子にさせていただきました、という意味があります。本来、法名をいただくという事は、仏教をよりどころとした生活を送るための名のりなのです。

ところが大きな時代の流れの中で、字数の多い方が「位が高い、ありがたい」といった社会通念があり法名の形式の上で浄土真宗本来の姿を失い、法名の字数を多くしたり居士・大姉をつけたりするようになっていったのです。これらの事から字数の多少に何か意味があるかのような誤解を与えてしまったのです。
現在宗門では、2字の法名を名のることの喜びが伝えられていなかった事の反省がなされ、全国教区をあげて法名統一の取り組みがなされています。

さて、お父様がこの事をなかなかわかってくださらないという事ですが、長い間この社会通念の中で育ってきた思いでしょう。ですから、そう簡単にかわるという事はむずかしいですよね。根気よくお話し合いをしたり、ご住職からも、月忌参りのチャンスのたびにお話をしていただいたりしてみてはどうでしょう。また、ご本山で帰敬式をうけ、いただいた法名を和歌や絵画の雅号として用いてみてはどうでしょう。

そして何より大切な事は、私たち真宗門徒は阿弥陀様のご本願の働き、願いの中で、皆等しく同じいのちをいただき生かされている私である事をお聞かせいただく事です。一人で聴くのではなく、家族そろってご聴聞させていただく事も大切なのではないでしょうか。

 

Q：浄土真宗の教章に、本尊　阿弥陀如来（南無阿弥陀仏）とありますが、阿弥陀如来＝南無阿弥陀仏ということなのでしょうか。

 

A：厳密に言うと違うのですが、おんなしといってもいいかなと思います。なもあみだぶつは阿弥陀如来に任せますといった意味ですので…。でもご本尊としては「南無阿弥陀仏」とかかれているものがありますから。